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『セーラ』編曲中(1) [お仕事]

 『セーラ~A Little Princess』のオーケストレーション作業を進めています。例年よりも早く着手したものの、思ったほどにははかどらず、まだ第一幕の終盤あたりにさしかかったところです。
 言うまでもなく、オーケストレーションと言ってもフルオーケストラではありません。板橋編成というヤツです。サクソフォン五重奏を中心として弦楽器・管楽器・ピアノなどを加えるという形で、例年は本来フルオーケストラで書かれたものをこの編成にアレンジしているわけです。
 しかし今回はそうではなく、ピアノスケッチで書いたところからこの板橋編成を起こすという作業です。
 ピアノスケッチをおこなう際、私はやはりフルオーケストラをイメージしています。その仮想のフルオーケストラ版を、例年のように板橋編成にアレンジするという気分で譜面を書いているものですから、イメージがどうしても間接的になります。板橋編成の響きかたはよく知っているにもかかわらず、はたして夢想したような音がちゃんと出るのかどうか、心許なさを覚えながらの作業になっています。
 ファミリー音楽会などのためのアレンジで、似たようなことをした経験はけっこうあるのに、やりづらさがあるのでした。

 まず、普通のオーケストラであれば弦楽合奏を用いるべきところを、サックスアンサンブルに託さざるを得ないという点、いままでも同様であったわけですが、今回はとりわけ気になります。
 今回の板橋編成に含まれる弦楽器は、ヴァイオリン4、チェロ1、コントラバス2です。ヴァイオリンは時にソロ楽器として使う場合もありますが、基本的には4挺が一緒に動くようにしています。つまり第1ヴァイオリンの役割です。去年のように6挺使えれば、第2ヴァイオリンも受け持たせることが可能なのですが、4挺では常時分けるのは危険でしょう。
 サックスアンサンブルの上にこのヴァイオリンパートを重ねると、そこそこ弦楽合奏っぽい響きに近くなります。従ってメインの音として使うのがヴァイオリン+サックスアンサンブルということになります。
 コントラバスは1挺でも入ると低音の深みがまるで違うことになるので、この編成では重宝しています。今回は2挺も入ってくれるので、ありがたい限りです。
 ただ、チェロ1挺というのが不安要素です。チェロよりコントラバスのほうが多いというのがまず異常事態と言うべきですが、ともあれこのチェロが思ったほど響かないのではないかということを危惧しています。例えば第2ヴァイオリンとヴィオラのパートの代用としてアルトサクソフォン2本を使った場合に、「第1ヴァイオリン・アルトサックスA・アルトサックスB・チェロ」という重ねかたで、チェロが低音として充分に聞こえるのかどうか、あまり確信を持てません。それでついついバリトンサクソフォンなどをチェロと一緒に使ってしまいます。なおバリトンサックスは、ファゴットの代用としての使用もあるため、全曲を通じてたいへん忙しくなります。

 木管楽器は、サクソフォン勢を除くと、フルートピッコロ持ち替え)1、オーボエ2、クラリネット(B管A管持ち替え)1となっています。フルートとクラリネットが1本ずつというのが、いざ取りかかってみるとかなりの制約になっています。第1ヴァイオリン互換の役割を担うことの多いソプラノサクソフォンが、今回はその役割を果たさなくて良いので、第2クラリネットのように使うことが多くなっています。
 フルートやクラリネットは、メロディ的な扱いの部分はまだ良いのですが、私のオーケストレーションでは、同じような音型を繰り返す伴奏的な役割を受け持つことがよくあって、その場合普通の2管編成オーケストラであれば、2本の楽器が代わる代わるその音型を奏することで適宜休みをとる、ということができるのですが、1本ずつだとどうしてもオーバーワークとなります。
 また、フルート奏者がピッコロに持ち替えた時に、もう1本フルートがあればなあ、と思うことが少なくありません。
 そして何より、ファゴットが居ないのがつらいところです。上に書いたように、ファゴットの役はバリトンサックスが果たすことになりますが、バリトンサックスはチェロの補助という役目もあって、本当に忙しいのです。
 オーケストラの中での、木管だけによるアンサンブルというのも私は好きなのですが、それをやろうとすると板橋編成ではやっぱりサックスが手伝わざるを得ません。弦楽合奏っぽい響きとの差別化が図りづらいのでした。

 金管楽器は、トランペット1、トロンボーン1、バストロンボーン1となっています。トランペットが1本だけとはいえ駆け込みで加わることになったのは嬉しい限りですが、複数のラッパを鳴らしたいなと思うことも少なくありません。
 トロンボーンが2本、しかも片方がバストロンボーンであるというのはいろいろ使い道があります。ただ、3本あればそれだけで和音が作れるので、惜しい気がします。
 金管では、ホルンが無いのが寂しいところです。ホルンのアンサンブルは、大きな響きの中での支えになってくれることもありますけれども、レチタティーヴォ的なくだりのところで、単独で伴奏にあたらせたいと思うことが少なくありません。トロンボーンのアンサンブルでは迫力がありすぎて歌を食ってしまいかねませんが、ホルンだと柔らかく包んでくれるので、静かな進行、セリフ的な進行の時には重宝します。弦楽合奏・木管合奏・ホルンアンサンブルというグループを使い分けることで、場面の雰囲気をそれぞれに彩ることができるのです。
 ところが板橋編成だと、これまたサクソフォンに託さざるを得ません。結局、和音としての音色のバラエティが限定されてしまうということになります。そしてサクソフォン奏者が絶え間なく吹き続けなければならない状態にもなってしまいます。

 最後にピアノの存在があります。
 板橋オペラの最初の頃は、楽器数も少なかったので、ピアノは響きの骨組みを作る大事な役割を果たしていました。ヴォーカルスコアに記されているリダクションピアノをほとんどそのまま弾くということもやりました。
 しかし近年は楽器が増えてきたので、ピアノはだいぶ暇になっています。
 私のアレンジにおいては、ピアノに託すべき役割は3つほどあります。
 まず、編成に含まれていることが少ない、打楽器の代用としての役割です。いちばん効果的なのはティンパニのトレモロ(ロール)の代わりですが、和音を他の楽器と一緒に叩くことで、音色に打楽器的な硬質なものを加えるという使いかたもあります。もちろん鉄琴木琴などの代用品としても使います。
 ふたつめが、弦楽合奏のピチカートの代用です。弓を使わず指先で弦をはじく独特の音色ばかりは、サックスアンサンブルに任せるわけにはゆきません。そこでこれをピアノのスタカートとしてやらせます。もちろんピアノの音がピチカートに聞こえるわけはないのですけれども、板橋編成の中で多少なりともその種の減衰音を持っているのはピアノしか無いのでやむを得ません。弦が少しでも入っている場合は、一緒にピチカートすることで、なんとなくピチカートによる和音というような錯覚を得られそうです。
 そしてハープチェレスタの代用としての役割もあります。これがまあ、いちばん親和性の高い使いかたでしょうか。
 本来オーケストラのために書かれているものを板橋編成にアレンジする際のピアノの使いかたは、おおむね上の3つなのですが、今回、伴奏型や分散和音型などが、どうもピアノのエクリチュールっぽいというあらたな問題が発生しています。スケッチはピアノを叩きながら作ったので、ある程度やむを得ないところがあるのですが、本当はオーケストラ曲を書く場合、ピアノから発想するということはあまり薦められません。
 それでもフルオーケストラであれば、なんとか他の楽器に、その楽器らしい形に変換しつつ移すということをせざるを得ませんが、板橋編成ではなにぶん楽器が手薄であるため、それならピアノがやってしまえば良いだけの話ではないか、ということになります。第4の役割ですね。

 テュッティ、つまり総動員で盛り上げるようなところは、むしろやりやすかったりします。どちらかというと、薄い伴奏で良いようなところのほうが頭を使います。和音が充足できるグループがサックスアンサンブルとピアノしか無いので、単調になってしまわないかという危惧が拭えないのでした。
 いつかフルオケ化する機会があるでしょうか。フルオケ化したい作品は他にもいくつかあります。とにかく自主的にやっておいて、求められた時にすぐに提供できる状態にしておいたほうが良いのかもしれませんが、オーケストラのスコアを作るというのは相当なエネルギーを要する作業であって、演奏のあてもなくその作業をおこなうのは、体力と精神力をかなり消耗します。どこか他のオペラ団体などに売り込めれば、あるいは道も拓けるかもしれませんが……

 稽古のほうは本格的にはじまっています。まだ音楽稽古の段階ですが、新作にしてはみんななかなか頑張ってくれていて、特に主演の宮入玲子さんは、主演しかもタイトルロールという立場上ものすごく出番が多いのに、すでにほとんど歌えています。女性陣で音とりが危ないのは数人だけで、歌はとりあえず心配ないという人が多く、頼もしい限りです。
 それに較べると男性陣はちょっと不安が残り、こんど男性陣のみの稽古の時間をとっていますが、出番がほとんど3幕1場というシーンに固まっているので、まあなんとかなるでしょう。
 そろそろ配券の営業もはじめなければならない時期です。チラシの出来が少し遅れていて宣伝しづらいのですが、私も責任上相当数のチケットを売りさばかなければならないでしょう。この日誌でも重ねて宣伝していこうと思っています。


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