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『星空のレジェンド』初演始末 [日録]

 『セーラ~A Little Princess』初演から一週間も経たずして、もうひとつの新作初演がありました。『星空のレジェンド~七夕に寄せて』です。これだけ近接した時期に自作の初演がおこなわれたというのも、私にとっては珍しいケースです。
 『セーラ』は企画書作成からほぼ2年、作曲にかかってからも1年4ヶ月という長期間にわたって私の脳裡を占め続けていましたが、『星空のレジェンド』のほうは依頼を受けてから約1年半になるものの、作曲期間は去年の9月から12月と、比較的短いものでした。それも専念したわけではなく、『セーラ』を進めたり『レジェンド』を進めたりという並行進行だったわけですから、実際に作曲に費やした期間を日割りのようにして求めれば、2ヶ月かそこらだったのではないかと思います。
 正味時間だけでおよそ60分に及ぶ作品ですから、オペラほどではないにせよ大作です。私の作品としては、3つの大規模オペラ(『セーラ』『葡萄の苑』『豚飼い王子』)に次ぐ長さになります。また「合唱曲」としてはいままで最長のものが『家族の風景』『レクイエム』の約30分です。作曲速度としても相当に速いものだったと言えます。
 それで内容が薄くなったというわけでもありませんが、ただ「ベタ」なところが多い曲になったような気がします。私は何度も、

 ──人からは「MICの曲だってことはすぐわかるね」ということをよく言われるけれども、そのいわゆる「MIC節」なるものがどういうものなのか、自分ではさっぱりわからない。

 と書いたり発言したりしており、いまでもその気持ちは変わらないのですが、『星空のレジェンド』に関しては、おそらく全曲を通じて「MIC節」らしいところが頻出しているのではないかという気が、なんとなくしているのです。具体的にどこがそれだとは指摘できないのですけれども。

 2回ほど練習に足を運びました。平塚までは、上野東京ラインが開通したおかげで、上野側と新宿側のどちらを経由するにせよ、赤羽で乗り換えればあとは直行できるという便利なことになったのですが、それでも川口駅からは少なくとも1時間半は見ないと辿り着けず、家から川口駅、平塚駅から練習会場の徒歩時間を考慮すると、2時間前には家を出ないとならない感じです。かなり遠いことは確かです。
 そして今日が本番だったわけですが、10時からホールリハーサルがあるというので、いちおう聴きたいと思い、8時頃に家を出ました。本番の演奏会場は、これまでの練習会場より少し駅から遠く、歩くと7~8分くらい余計にかかりそうです。本当はもうほんのちょっと早く出るべきだったかもしれません。
 8時09分川口発の京浜東北線電車に惜しいところで乗り損ね、その次が14分発だったので、予定していた17分発の上野東京ラインに乗り継げませんでした。
 次の電車、と見ると、なんと2本続けて上野止まりです。そんなことがあるとは予想していなかったので狼狽しました。上野東京ラインは30分までありません。と言って、湘南新宿ラインのほうは逗子行きで、平塚まで行くには戸塚あたりで乗り換えねばならず、おそらくその乗り換える相手は当の30分発の上野東京ラインか、あるいはもっと遅い電車になると思われます。要するにもうどうしようもないので、2本の上野行き電車をやりすごし、30分の電車に乗りました。車内アナウンスによると平塚着は9時47分です。
 演奏会場の中央公民館までは徒歩で15分とチラシに書いていました。バスも何系統かありますがすぐに乗れるとは限りません。雨も降っているし、仕方なくタクシーで乗りつけました。
 マダムは当初、本番の時刻(14時半開演)に合わせて来ると言っていましたが、結局朝から一緒に出てきました。一旦タクシーで中央公民館に着いてから、時間を潰すと言って出て行きました。駅のあたりに戻ったのだと思います。

 ゲネプロというわけではなく、ちょくちょく止めながらのリハーサルでした。色を使うわけではありませんでしたが多少の照明効果もあったのでその確認とか、舞台がぞんがい狭いために曲によって出入りが発生するのでその練習とか……舞台稽古は昨日いっぺんやっただけのようなので、まだ未確定の事項がいろいろとあって、それらをチェックしながら曲を進めました。
 『星空のレジェンド』には合唱、児童合唱の他、3人のソリスト、ふたりのナレーター、それに終曲のみ踊り手とふたりの打楽器奏者が加わります。なかなか大所帯なので、チェックも大変でした。
 私はソリストの歌やナレーション、打楽器を聴くのは今日がはじめてでした。それがあるので、8時という早い時間に出てきたのです。
 客席で聴いてみると、ソリストの歌にはほとんど問題ありませんでした。また何かあったとしても、これから直して貰う余裕は無さそうです。
 打楽器は、私のイメージしている音とは少々違いましたが、これもいまさら代えてくれと言うわけにもゆきません。話を聞くと、私の指定した「太鼓」と「銅鑼」を調達するために、大川五郎先生と理事長の江川さんがえらくかけずり回ったとのことでした。太鼓に関しては、何年か前にコーロ・ステラ『唱歌十二ヶ月』を歌った際に、「村祭」で私が叩いたような、小型の、しかしけっこう低音の出る和太鼓を考えていたのですが、調達できたのはずいぶんと高い音の楽器でした。枠打ちの音があんまり目立たないほどです。銅鑼に至っては結局ちょうど良いものを見つけることができず、サスペンデッド・シンバルで代用することになったようでした。それほど調達しづらいものなのかと驚きました。
 ナレーションについては、それ自体はとても良かったのですが、歌とのつながりに少々難を感じたので、その点は大川先生に申し上げて改善していただきました。つまり、舞台上で人員が入れ替わるとき、ナレーターはその入れ替えを待ってから話し始めていたので、空白の時間がだいぶ長く、せっかくの曲の流れが止まってしまうように思われたのです。入れ替えを「やりながら」すぐに話し始めたほうが良いのではないかと指摘したのでした。
 「人が動いていると、客がナレーションに集中できないんじゃないかと思ったんだけどね」
 と大川先生は言いましたが、ここは私の提案を受け容れてくださったようです。
 本来は入れ替えはせずに、最後の打楽器とダンサー以外はみんな舞台上に常駐し、自分が歌わないところは椅子に掛けるといった形で演奏したほうが、流れとしては明らかに良いのですけれども、残念ながら全員を常駐させるだけのスペースが、そのホールには無かったのでした。市民センターというところの大ホールなら広かったようなのですが、改装工事のため今年は──あと数年も──使えなかったとのことです。

 リハーサルは12時過ぎに終わり、楽屋で昼食をいただきました。楽屋はそうたくさんあるわけではなく、大川先生、テノールやバリトンのソリスト、男性ナレーター、主だったスタッフなどとも共用でしたが、私としてはそのほうが楽しく過ごせました。
 開場時刻になって、また客席に移動します。私の席は紙を貼って指定されていました。端っこのほうでしたが、終演後に花束贈呈があり、プレゼンターが行きやすい位置ということだったようです。ほどなくマダムも隣に来ました。全体の客入りもなかなかのものでした。
 開演時刻は「押す」ことなくはじめられました。まず子供たちが舞台上に出てきて、「序曲」を歌います。子供たちの歌は、私が最初に練習に顔を出した5月末の時点で、もうほぼ出来上がっており、若干強弱のことを指摘するくらいしか私から言うことはないほどでした。大人よりはずっと憶えが良いのも当然のことでしょう。
 ただ、ホールで聴いてみると、せっかく歌のほうができているのだから、少し「演技」も考えたほうが良かったかもしれないという気がしました。何も芝居をしろというのではなく、例えば「あちらの星」「こちらの星」などと歌うときに視線の方向を変えてみるとか、「エネルギー充填完了!」とか「システム・オールグリーン!」とかのシュプレヒゲザンク(しゃべるように歌うこと、というか「リズムのついたしゃべり」)では若干「振り」をつけるとか、その程度のことです。それだけでもっとずいぶん面白くなったのではないでしょうか。
 「序曲」は児童合唱曲としてはかなり長く、NHK合唱音楽コンクール小学生の部だったら時間オーバーになりそうなほどです。独立して演奏会などで歌っても差し支えないかもしれません。
 そのあとで、器楽部分がしばらく続きます。もともと『星空のレジェンド』の器楽は、オーケストラを意識して書いており、ピアノ1台で演奏するという想定にはなっていません。この部分も、ピアノ曲としては相当に演奏困難なはずなのですが、本日のピアニストの鈴木真澄さんは、一切のごまかし無く、まともに弾ききってくれていました。私にはとても無理です(笑)。
 序曲のあと、子供たちが退場し、大人たちの合唱団が入場します。これがけっこう時間を要し、ナレーションを待たせたくなかった箇所でもありました。全曲中でいちばん長いナレーションが入るところでもあり、入れ替えしながら話して貰うと、ちょうど良いタイミングになりました。
 ただし、ナレーションのいちばん最後のところが、次の「牧場」の前奏にかぶさるような演出を私は考えていたのですが、大川先生はここはナレーションが全部済んでから前奏をはじめておられました。前奏というのが、単音を繰り返すだけという、手抜きと思われかねないほどにシンプルなものなので、ナレーションにかぶせると、合唱団がその繰り返しの回数を数え損ねるのではないかと危惧したのかもしれません。
 「牧場」も相当に長い曲で、牛飼いアルテオの一日を描写しています。夜明け前から日暮れまで、音楽も薄明から日中を経てまた薄明に戻ってゆくという作りかたをしました。次々と転調することで時間の経過を印象づけています。この曲に関しては、照明をいろいろと使いたかったところです。今回は白色光のオンオフだけでした。
 「牧場」が終わると、照明が下手側半分の女声陣だけに当たるようになります。次の「私はヴェガ」が女声合唱であるためです。この曲、大川先生は谷山浩子をイメージしたとのことで、しかも私の作ったメロディのイメージがそれにドンピシャだったそうなのですが、私は谷山浩子よりも、湯山昭みたいな感覚で作曲していました。湯山先生の女声合唱曲によくありそうな書法であろうと思います。これはさほどに長くなく、合唱祭などで単独で扱うにも適していそうです。

 このあと、ソプラノソロとテノールソロが登場し、「愛の二重唱」となります。私の大好きなベタベタのラブソングで、書いていても嬉し恥ずかしといった気分でした。好きなわりになかなか書く機会が無いので、ありがたい仕事であったと思います。欲を言えば、もう少しロングトーンでからむところを書きたかったかもしれません。歌詞の量が多かったせいもありますが、わりと細かく動く部分が多くなってしまいました。それでも、ソプラノの佐竹仁美さん、テノールの三木佑真さん共にたっぷり情感を込めて歌ってくださり、ヴィジュアル的にも美男美女でなかなか良かったと思います。
 さらにバリトンソロの森道太郎さんとと合唱が加わって「天の怒り」となります。これはオペラのシェーヌ(シーン)のような曲です。実を言うとバリトンソロパートは、謡曲狂言のような歌いかたをイメージして書いたのですが、残念ながら森さんはお若いこともあって、いささか軽快すぎる「天帝の使い」であったかもしれません。私が本番当日まで聴く機会が無かったので、これはやむを得ないことです。
 ソリストたちが退場し、再び子供たちが入ってきて、混声合唱と一緒に「別れ」を歌います。MIC節なるものがあるとすれば、この曲あたりにいちばん匂っているのかもしれません。ぜひともフルオーケストラ化したい曲でもあります。
 「別れ」のあと休憩となります。内容的にも切れ目になるし、時間的にもこのあたりでちょうど半分くらいです。私の読みでは、ここまで音楽だけで30分でした。ナレーションが入ったり、本番特有の現象であるテンポの遅れなどもあって、実際には40分かかっていました。トイレが少ないという理由で、20分もの休憩を入れていましたので、後半が再開されるまでに開演時刻から1時間ということになります。何やら本格的な演奏会になってきました。

 後半の最初はテノールのアリア「愛の想い出」です。あまりに長くなりそうだったので、大川先生に頼んで……というよりも脅迫して、1聯まるまるカットして貰った曲でした。実際、これより長くなっては歌い手のほうがもたないだろうと思われるほどでした。とはいえ、テノールアリアとしてのレパートリーになりはしないかと密かに考えています。
 続いて男声合唱による「天の牛」。照明は上手側の男声のみを照らします。
 大川先生は、滑空してゆくような軽快な曲想をイメージしていたらしいのですが、私はあえてひどく泥臭い、鈍重な者が無理に急いでいるような雰囲気にしました。伴奏型は実は『展覧会の絵』「ビドロ(牛車)からパラフレーズしています。考えてみると私にはこういう「泥臭さ」「骨太さ」を感じさせられるような作品があまりありません。自分ではあまり本意ではないのですが「フランス風ですね」などと言われることが多く、この「天の牛」は、「こんなのも書けるよ」というアピールでもありました。
 女声合唱による「天の宮殿」が続きます。練習ではだいぶ苦労していましたが、だいぶまとまり、曲想として要求した「謎めいた雰囲気」もある程度出せるようになっていました。
 次の「さだめ」は、曲想がめまぐるしく変わる曲で、いちばんまとめづらかったのではないかと思います。「氾濫」は曲想は一貫していますが、とにかく大騒ぎな曲。そしてまた子供たちが加わって「さだめII」となります。
 終曲は、まず児童合唱、次に混声合唱が歌い、後半でサンバリズムの祭り囃子となります。踊りは平塚中等教育学校(近年導入された公立の中高一貫校)のダンス部の女の子たちが担当し、舞台上は満員なので花道を使って踊っていました。また同校の合唱部も、この終曲だけ参加して歌っていました。

 後半も約40分、つまり純粋に音楽だけなら60分ですが、「上演時間」としては80分を要する、やはり大作でした。カーテンコールに引き続き、終曲の最後のところをアンコールとしてもういちど演奏し、花束贈呈もあったりして、全部終わったのは16時20分くらいでした。演奏会として堂々たるものです。単一作品でひと続きの演奏会を構成でき、前座も必要としない規模だったのでした。
 さらに嬉しいことに、『星空のレジェンド』は今回で終わりではなく、毎年上演というもくろみがなされており、実際すでに来年の会場が押さえられているということなのです。私はこのエントリーで、やや苦言めいたことも書きましたが、次回を見据えてということがあったのでそう書けたというところもあるのでした。
 次回は照明を少し凝ったり、あるいは若干の楽器を増やすなどし、その次はまた……という具合に、毎回何かのオプションを増やしてゆくというのも面白いかもしれません。
 もちろん、最終的にはフルオーケストラ装備の本格的なオラトリオにしてみたいものですし、平塚から飛び立って、例えば同じように七夕祭が有名な仙台などでも上演されるようになれば良いものだと思います。大川先生はじめ実行委員の幹部のかたがたはそのつもりでおられるようで、私もできるだけの協力はしたいものだと考えています。


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