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『セーラ』作曲中(5)・『星空のレジェンド』作曲中(3) [お仕事]

 年末も迫ってきて、皆さんお忙しいことと思います。
 ただ、年末はどうして忙しいのだろうかと考えたりもします。
 雑誌などでは「年末進行」といって、年明けには印刷所などが休みになってしまうものですから、本来月はじめにやっているような作業を、年末に限っては前倒しして進ませるという習慣になっています。だから雑誌社や出版社などは、年末は殺人的な忙しさになります。最近は年明けに操業している印刷所も珍しくないので、そんなに前倒ししなくとも大丈夫ではないかという気もするのですが、長年の習癖というものはなかなか拭い去ることができないのでしょう。
 それから、人々が商品をつけで買うのが普通だった頃は、年末が「掛け取り」の時期になるので、店の小僧さんなどが大忙しでした。それこそ顧客の家から家へと走りまわって、何かとゴネまくる貧乏人たちからなけなしのお金を吐き出させるのは、まったく大変な仕事であったろうと同情します。こんな掛け取りや、彼らにつけを払うための金策にいそしむ連中が何十人も街じゅうを駆けまわっているのは、さぞかしあわただしい光景だったことでしょう。しかし、これも買い物が現金払いとなり、ローンにしても口座引き落とし日が月はじめになったりして、別に年末だからどうこうということはなくなりました。
 年賀状を書く、大掃除をしなければならない、郷里に帰らなければならないなど、ふだんの月にはしないことがいろいろ入ってきて忙しいということもあるかもしれません。確かにそれはそうですが、いずれも1日から数日を費やせばなんとかなるのが普通のことですから、そんなに大騒ぎするほどのことかという気もします。

 こうしてみると、現代では年末が忙しい、あわただしいというのは、もしかすると思い込みに過ぎないのではないかとも思えてきます。江戸時代以来日本人は年末に忙しくしていたものだから、ついつい「年末は忙しい」という固定観念が生まれてしまい、忙しくしていないと申し訳ないような感覚がこびりついてしまったのでしょう。自分は本当に忙しいのか、いまあわただしく奔走しているのは本当に年明けにはできないことなのか、いちど疑ってみるのも良いかもしれません。

 さて、私個人に関して言えば、間違いなく忙しい日々を過ごしています。
 ふたつの大きな作品、オペラ『セーラ』と合唱劇『星空のレジェンド』がまだ出来上がっていません。『セーラ』がこの時期までもつれこむとはまったく予想外でしたし、『星空のレジェンド』は年内に上げる約束をしています。
 作曲の締め切りの約束など、そんなに厳守する人はあんまり居ないかもしれないし、音楽家同士であればその辺は微妙になあなあで済ませてしまえるところがあるのですが、『星空のレジェンド』に関しては、平塚市合唱連盟という団体が委嘱者であり、アマチュアの団体だけにかえって厳格で、最初の打ち合わせのあとに契約書みたいなものを送ってきたりしました。
 「甲は乙に、完成された譜面を平成26年12月31日までに引き渡すこと」
 などと書いてあるのを見ると、なんだか襟を正すような気分です。遅れるとギャラを貰えないのではないかという恐れさえ感じます。何がなんでも年内に仕上げる必要がありそうです。
 もっとも、本当は「仕上げる」わけではありません。年内に引き渡すのは「ヴォーカルスコア」で、つまり合唱、重唱、独唱などの声楽部分にピアノ伴奏がついた譜面ということになります。初演の時には、他にいくつかの楽器を加える予定であり、そのためのアレンジはまた後日ということで納得して貰っています。肝心なのは公募したアマチュアの合唱団が早く練習できるようにするということであり、すでに何曲かは練習を開始している模様です。
 『セーラ』のほうは年内完成は諦めざるを得ません。本当は今年の7月くらいには、こちらもヴォーカルスコアを仕上げているつもりだったのに、やはりオペラというものを甘く見ることは禁物であったようです。
 何しろ、書いても書いてもテキストが一向に消化できない感じで、もっと台本を削るべきであったと後悔したりしています。
 現在、2幕2場を仕上げたところです。この2幕2場は、わりと一気に書き上げたように思うのですが、そのあいだは『星空のレジェンド』は完全にストップしていましたし、他の編曲仕事などがほとんど入っていない状態であったから可能だったことです。
 『セーラ』の2幕2場を仕上げてから、『星空のレジェンド』に戻って、3つの楽章を立て続けに書きました。私はそうやって、書こうと思えば書けるのですが、アマチュア向けに合唱のエクリチュールを易しくしておくというような配慮をする余裕はありませんでした。3楽章とも、少々歯ごたえのある曲になってしまったかもしれません。大体私は、易しく書いたつもりでも「難しい」と言われるのが常で、それはまあ「聴いたことのない曲」に対する普通の反応かもしれず、実際にはそれほど難度の高いことを要求しているわけではないのですけれども(「憶えてしまえば歌い(弾き)やすい」ともよく言われます)、とっつきが悪いということはあるのでしょう。
 ともあれ、その3楽章のひとつは「不思議な雰囲気」を要求するテキストであり、ふたつめは妙にドラマティックなテキストであり、3つめは「狂乱」したようなテキストでしたので、曲のほうもそういう性格のものにせざるを得ず、その結果として多少とっつきが悪くなったとしても、これはいたしかたありません。

 残すところは、『セーラ』は第3幕、『星空のレジェンド』は2曲です。
 3幕ものの第3幕が残っているのでは大変ではないかと思われるかもしれませんが、実際には3分の1を占めているわけではありません。3幕ものの芝居というのは、最後の第3幕は他よりも短いというのが典型で、『セーラ』もそうなっています。2場あるところは他の幕と同様ですが、第2場は実質的にはエピローグであり、その中でも手間取りそうだった最後の合唱が、1月11日(日)ファミリー音楽会でお披露目演奏をおこなうために、すでに書き上げてあるという嬉しい状況です。
 3幕1場のほうは、それなりの長さがありますけれども、調子良くポンポンと言葉の応酬がおこなわれる部分が多く、凝った造りにするべき箇所はさほどに多くないため、私のほうも調子に乗りさえすれば、そう手間取ることもありません……というか、ないと信じたいところです。
 そのファミリー音楽会あたりには、キャスト諸氏に譜面を最後まで渡せれば良いなあ、と思っていますが、さてどうなることやら。正月の松の内は、あまり落ち着いて作曲をしていられるかどうかわかりません。
 『星空のレジェンド』は、すでに11の楽章を仕上げて、残りふたつということです。9月からはじめてはいましたが、実質的に進み出したのが10月からと思えば、この曲は私としてはかなりのペースで進めていると言えます。やはり物語的な内容の作品が私には向いているのかもしれません。テキストが抒情詩のたぐい──普通の声楽曲だとそのほうが多い──の場合、私はもう少し苦労するような気がします。そして、オペラに較べると、一曲一曲が独立しているために、作業にメリハリがつけやすいということもあるでしょう。
 残りふたつのうちひとつめ、つまり第12楽章は、わりと素朴な曲になりそうなので、とりかかってしまえば時間はそんなに費やさないで済みそうです。
 終曲は、さすがに終曲らしく派手ではあるし、長さもかなりあることになりそうですが、ただ大漁節のパロディのような部分がテキストの半分くらいを占めていて、こういうパロディ的な作曲になると、私は愉しんでどんどん進められるたちです。それやこれや勘案するに、かろうじて、約束した12月31日までには、譜面データを送信できるのではないかと皮算用しています。

 それにしても、めぐり合わせとはいえ、これだけ大規模な作品がふたつ重なったのははじめての経験で、私がこれほどに大量に創作をおこなった年も無かったかもしれません。
 こんなに大量にアイディアを放出していると、そのうちネタが尽きるのではないかと不安に思ったこともありますが、幸いそういうことも無さそうです。
 創作力というのは、どうも「使いすぎると涸れる」というものではなく、「使っていないと錆びる」というのが正鵠を射ているのかもしれません。実際、さまざまな事情で作曲仕事がしばらくできず、例えば1年以上間が空いてしまったということもあるわけですが、そういう状況で久しぶりに創作をしなければならない際に、勘を取り戻すのにはしばらく時を要するような気がします。沢山書けば沢山書いただけ、いろんな回路の通じが良くなって新たなアイディアも湧きやすくなるというものなのでしょう。まあ、粗製濫造は自戒しなければなりませんが。


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